自然との交歓を強く感じさせる。山、川、海岸の白黒写真、その撮影現場で採取した植物や火山灰をアトリエに持ち帰って撮影した白黒写真、そして採取した植物や火山灰そのもの。これら2種類の写真と採取物という3つの構成要素によって、雄大な自然の魅力を失うことなく、親しみを持てる姿に変換している。
岐阜と福井の県境の温見峠と油坂峠、岐阜県坂祝町の木曽川の河原などのほか、遠くは阿蘇山まで、計6か所を訪れて制作した新作9点を出品。
現在の作品のスタイルは1983年から続いているが、77年から79年にかけて作者は、油絵の具象画を描いていた。絵よりも写真、さらに採取物を付け加えるという試みの意図は、迫真性の追求にあり、結果として独自性を獲得した。作者は1952年、愛知県扶桑町生まれ、在住。
(16日まで、名古屋市中区栄3丁目、丸栄スカイル南)
1991年2月11日 読売新聞 / 石井洋次