白いボードに、マクロやミクロの何コマかの白黒の風景写真と、その場で採集してきた砂や貝殻、草、木の皮などを配する独特の表現スタイルに固執する平山清隆の個展が、名古屋市中区栄3-7-102、ウエストベスギャラリーで開かれている。
 平山の作品づくりは、自身を大自然の中に立たせることから始まる。四季折々、刻々の気象条件で変容する風景をまず眺め、感応すればシャッターを押す。遠く、近く、足元まで観察眼を働かせるうち、作品の構想が固まってくる。その場の自然の微妙な一部を採集して待ち帰る。あとは、写真と採集物を構想をもとにレイアウトするだけだ。
 このような表現形式は、単なる個人的な旅の記録に堕してしまったり、作者の意図が見る側に伝わらない危険性を内包している。このために平山が編み出したのが、白黒の写真だけを使い、採集物をボードから2.5センチ下げた浅い直方体の底にタイルセメントで固定させるなどの技法である。カラー写真だと、それ自体が作者の想を超えて勝手にしゃべり始めるだろう。直方体の採用は平面作品にアクセントを生み出す狙いだ。
 例えば、連作「KOHOKU」(湖北)の1点。山々と冬の北風に押し寄せる大波の4コマからなるパノラマ写真を上部に配し、その下に波打ち際で採集した砂と、さまざまな貝殻をちりばめた5つの異なる直方体、それに、貝殻の錯乱状態を示す4枚の写真が入り組んだ形でレイアウトされている。遠く(上)から近く(下)への目線の移動。白黒写真と波に洗われてきれいな実物の貝殻、砂が、冬の自然の猛威を際立たせる。それこそ作者の意図でもあろう。平山がこのスタイルに執着し始めて8年。表現力は着実に向上しつつあるようだ。
 平山は1952年、愛知県・扶桑町生まれ。同展は24日まで。

1989年6月16日 毎日新聞(夕刊)